停車場近くで夜ごと響く狸の汽車音
どんな伝承か
明治二二年一二月二〇日付の「下野新聞」に掲載された話。栃木県宇都宮市の停車場付近で、毎夜のように南あるいは北から汽車の進行するような音が聞こえるという評判があった。ある社員が深夜自宅で暖をとっていると、庭先で轟々たる音が三度ほど響いたが、家族はその時刻に汽車が発する道理はなく、噂の狸の仕業ではないかと身震いしあった。ある理学者はこれを昼間の車の音が鬱積し電気の作用によるものではないかと評したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。