助けの地蔵の前に立った大仏より大きな化け物
どんな伝承か
かつては押出と龍神の両方から郵便配達が出て、笹の茶屋で落ち合い郵便を交換していたが、押手と高野の間の便は大正二年に途絶えた。その理由として語られる話である。高野に住む中越の東伊之助が、大正二年の夏の晩、押手から上ってくる郵便を持って夜十時ごろ戻る途中、大門近くの助けの地蔵の前で、奈良の大仏より大きなものが立っているのに出くわした。引き返すわけにもいかず「お上の御用じゃ」と叫んで通り過ぎ、大門のそばで振り返ると、それは箕のような大口で笑い、火を吹いていた。伊之助は腰を抜かして郵便局まで這って帰り、以後その便は止んだ。語り手は狸の芝居だと言う。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。