火消しに化けた狸と断崖の火の玉
どんな伝承か
一九七五年頃の真夏、友人と蓼科へ向かう途中、韮崎インターを降りたところで道が分からなくなり、他の車とはぐれてしまった。山中で夜中の三時頃、ぼんやりと明るい方へ車を走らせると、昔の火消しの装束をした男たちが五十人ほど提灯を手に集まっていた。道を尋ねると、にやにやしながら反対の道を指し示された。教えられた道を走ると、後ろから火の玉が通り過ぎ、前方でぱっと消えた。車を降りて確かめると、そこは断崖絶壁の手前で、引き返すと火消したちの姿はかき消えていた。あれは狸だったと悟ったという。話者は梅津貴昶、回答者は松谷みよ子。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。