収容所の夢と行者に憑いた死者の声
どんな伝承か
おらは満州へ行って来たが、収容所の夢を見るとどこか具合が悪くなる。昨年も四十日ばかり病んだ。死骸ばかりの臭いようなところへまた来たかと思う夢である。死にかかった者に水をやるような夢を見ると病気になるので、あまり気味が悪く、近所の婆が連れて来た行者に拝んでもらった。すると行者は拝みもしないうちに乗り移られ、収容所で死んだ友達や子供が、腹へったー、水飲みてえー、助けてくりょと取り憑いて泣き叫ぶ。おれもまわりの者もみな泣いた。やがて行者はこてんと倒れ、恐ろしい亡者にとっつかれてしまったと言った。おらは昭和二十一年に帰ってきたが、収容所には一年いたのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。