残留七人の小舟による引き揚げ
どんな伝承か
寛政五年から青ヶ島に踏みとどまっていた七人は、野鼠の害と底のない寂しさに耐えながら暮らしを続けていた。だが八丈との船の行き来が絶えて丸六年、もはや命をつなぐ手立てがなくなる。享和元年六月八日、焼け残った家の材で小さな舟を組み立て、七人は全員でそれに乗って八丈へ引き揚げた。高村三右衛門から寄せられた義捐金もこの頃には雑用に消えて残っておらず、島の田を開こうとする力は尽き果てた。以後しばらく、還住を言い出す者は一人もいなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。