夢枕で母を迎えに来た父
どんな伝承か
母が亡くなったのは昭和三十六年三月十五日で、この月は昭和十二年三月十三日に会社で倒れて亡くなった父の命日の月だった。その頃、母は誰が見ても元気で、大好きな浅草へ行き、暖かくなったら歌舞伎を観に行くと張り切っていた。ところが会うたび「死んだお父さんが夢枕に立って、寂しいからそろそろ来いとうるさいのよ。まだ歌舞伎座に行っていないからその後でと言ってやった」と笑っていた。父の命日を過ぎた十五日の朝、母は誰も気づかぬまま亡くなっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。