隔離タンクで広がる無限の闇
どんな伝承か
タンクの中では体が自由に漂うので、頭や手足がときどき内壁に触れる。その瞬間、無限に広がっていた空間がたちまち現実の大きさに縮んでしまう。この切り換えの早さが、空間の認識に感覚から入る情報がどれほど効いているかを物語っていると立花隆は書く。彼のタンク体験では幻覚は起きず、気持ちよさのあまり眠り込んでいたらしい。多くの人が遅かれ早かれ眠ってしまうという。最初の体験から十二年が過ぎて記憶が薄れ、原稿を書くにあたって探し回った末、武蔵野のトータル・リコール研究所にたどり着いた。隔離タンクと呼吸法や発声などの身体技法で肉体を解き放つという研究所である。入って扉を閉じると、また空間が無限に広がっていった。
原典より
タンクの中でも、体が自由に流れ動いていて、頭か手足の一部がタンクの内壁にふれることがある。—— 臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。