戦死した父が夢で告げた寺の手抜き工事
どんな伝承か
千葉県市原市の曹洞宗龍渓寺では、昭和三十六年の夏から秋にかけて本堂の修繕が進められていた。檀家の寄付を五年がかりで集めた工事で、住職は二十三歳になる報告者の弟だった。盆に嫁ぎ先の東京から帰省した報告者が、蒸し暑い午後に母屋でまどろんでいると、戦死した父が夢に現れ、垂木は百本以上替えるはずなのに六十八本しか替えていないと語りかけた。話を聞いた弟が見積りを手に本堂を一回りして数えると、垂木だけでなく屋根のトタンまで質を落とした不正工事だったと分かった。一年後、現場監督は亡くなり、大工の棟梁は声を失ったと聞いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。