形見の杖を返せと夢に出た祖父
どんな伝承か
うちの長男の一治が、まだ小学校の当時に高尾山へ遠足に行き、爺につえを買ってきてあげたと言って杖を買ってきた。私の男親はたいそう喜び、孫が買ってきた杖だからと肌身離さずどこへ行くにも持って歩いた。その爺さんが八十で死んだあと、兄貴の娘が新井の方で借りた家の隣に、竹の杖をついて歩く一人暮らしの婆さんがいたので、うちの爺さんが使っていた杖を持って行ってやった。ところが一日二日して、面識もないはずのその爺さんが婆さんの夢に出て、悪いけどその杖を返してもらいたい、とられると困るのだと言った。婆さんは驚いて杖を返し、杖は墓場に立ててやったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。