烏天狗に薬草を告げられた狩人
どんな伝承か
東栄町本郷の三ッ瀬に住む為吉という狩人が、三十年ほど前に見た夢の話。あるとき村の者から肺病の薬にする啄木鳥を捕ってくれと頼まれ、猟期外の禁鳥で苦心のすえ二羽を捕って贈った。その頃の夢である。鳥を撃ちに出ると空に異様な音楽が響き、羽毛の一つ一つに黄金の鈴をつけた真白な大鷹が円を描いて舞っていた。逃げても追われ、人家の床下で足を掴まれると、相手は鼻の尖った烏天狗のような姿で、肺病の薬とて生あるものの命を奪ることはない、その薬なら山の草を三種そろえて黒焼にせよと告げた。目覚めると蛇苺のほかは草の名を思い出せず、七日のあいだ水垢離をとって祈ったが、再び同じ夢を見ることはできなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』は、松谷みよ子が編んだ「現代民話考」の一冊である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』のアンケートへの回答や聞き書き、新聞・雑誌の記事から集めた、予知夢や死の知らせの夢、死者や神仏の夢告げ、死の前後に出る火の玉、生きている人から抜け出す魂の話を各地から収める。三章それぞれの冒頭に編者の論考「考」を置き、項目ごとに代表的な語りと、県別に並べた短い報告を話者・回答者・出典を添えて載せる。