樹齢三百年の蓮華寺の江戸桜
どんな伝承か
江古田の蓮華寺の境内には、江戸桜と呼ばれる大樹があった。著者が若かったころ、春になると満開の花が境内一面を覆い、吉野山の桜もこうであろうかと思われるほどだったという。寺では毎年四月十五日に花見の会を催し、短冊を手にした俳人が集まり、大釜を空にするほどの甘酒がふるまわれ、素人の演芸に腹をよじって笑い、老いも若きも一日を遊んだ。この桜は樹齢三百年余り、幹の目通りは七尺もある名木であったが、今は老木となり、わずかに残った樹皮と朽ちた幹で余命を支えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
城西風土記と昔語り(熊沢宗一・1959年(昭和34年))
『城西風土記と昔語り』は、東京中野の江古田に住んだ熊沢宗一が昭和三十四年に著し、自ら発行した郷土誌である。中野長者と淀橋の伝説、御犬小屋や桃園の旧跡、新井薬師、江古田の獅子舞、内藤新宿や高田馬場の昔語りなど、中野と近在の伝説・旧跡・寺社を、古文書や碑文、琵琶歌も交えて記す。全二十章の後半には著者の百姓時代や終戦直後の食糧事情、台風の被害、日露戦争の軍隊日誌を収め、巻末に著者略歴を付す。