幽霊の母が育てた通幻禅師
どんな伝承か
南条郡武生町深草の龍泉寺は曹洞宗総持寺の末寺で、開山は通幻寂霊禅師と伝えられる。この禅師の生い立ちとして、やはり母の幽霊に育てられた話が語られている。毎晩、飴屋の障子の隙間から青白く細い手が出て一文飴を買っていくので、人があとをつけると墓場で消えた。その知らせで住職らが墓場へ駆けつけると、四、五日前に葬った身重の女の墓から赤子の泣き声がする。掘ってみると、買ったばかりの飴と一緒に赤子がいた。この子が住職に育てられて成人し、のちの名僧通幻禅師となった。別の書は、一文ずつ持ってきた銭が翌朝には木の葉になっていたとも伝える。
原典より
掘つてみると、今買つて來たばかりの飴と一緒に赤子がゐた。—— 福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
福井縣鄕土誌 民間傳承篇(中塩清之助(編)・福井縣鄕土誌・1939年(昭和14年))
『福井縣鄕土誌 民間傳承篇』は、福井市立実科高等女学校の郷土誌第二輯として教諭中塩清之助が編み、昭和十四年二月付の学校長金岡正孝の序を巻頭に置く。丹生郡の名、哭女、越前萬歳、仏の舞、幸若舞、猫塚、隠れ里、子育て幽霊、愛発の関、弁慶譚、八百比丘尼、水の神女譚を、古文献や他地方の類例と照らして論じる。生徒が集めた県下の昔話は類話をA・Bなどに分けて並べて解説を付し、校正者大村四朗の跋を添える。