一月一六日の伐採で右足を失った従兄
どんな伝承か
一月一六日は山の神が山林に出て遊ぶ日だから、山へ入って竹や木を伐ってはいけない——語り手はそう母から戒められて育った。だが母方の実家の従兄である鎗水久は杉の伐採を生業にしており、昭和三七年ごろのこの日、仕事の都合で古い杉林へ入って伐りはじめた。何本目かを切り倒したとき、逃げようとした足が根に引っかかり、樹齢五〇年ほどの幹に右足を押さえこまれてしまう。一人ではどうにもならず、駆けつけた友人たちも手が出せないまま、ついに右足を切断した。語り手はこの顛末を実家の兄嫁から聞いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。