染堂明神の鳥居近くに出た斗樽の頭
どんな伝承か
明治一三年九月八日の「陸羽日日新聞」が伝えた話である。良蔵という二三歳の男が、去る一日の夕暮れ、野良仕事の帰りに同村の村社染堂明神の鳥居近くを歩いていると、字小沼のほうからすさまじい音がした。怪しんでそちらを見やると、頭が斗樽ほどもある大蛇が勢い猛く小沼を渡り、こちらへ向かって来る。良蔵は身を避ける場所もなく、そのまま気絶した。やがて気がついて辺りを見回すと怪しいものは見えず、日はすっかり暮れていた。恐ろしくなって走り帰ったが、その夜から病みつき、今も療養中だという。これを聞き伝えた村人は恐れ、以後その場所を通る者は絶えたと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。