遺書と詩を残して家出した七歳の神童
どんな伝承か
宮城県宮城郡利府に住む近藤利右衛門の一子利一郎は、稀代の神童と評判で、四歳の時から書を読み、一を聞いて百を知る才があった。明治十六年五月には満六年二か月、数え七歳であったが、すでに「日本外史」ぐらいはすらすらと読み、常に新聞も読んで大人も及ばぬ識見を持っていた。男と生まれて立派な人物になるには東京へ出て学問を修めねばならぬと、幼い身で東都遊学を思い立ち、しきりと父にせがんだ。父は健気な心に感心しつつも、七歳ではまだ早い、四、五年待てとなだめていたが、利一郎は不満でたまらず、ついに五月十九日、学問修行のため十か年の暇を願う一通の遺書と一首の詩を残して家を飛び出してしまった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。