乳の重さで子を分けた大岡裁判
どんな伝承か
陸中遠野で昔話を集めていたとき、大岡越前守の裁判の話を得た。あるところで嫁と姑が同時に産をし、産児を同じ器で洗ったため、どちらが自分の子か分からなくなった。男女の子であったので二人とも男の子が自分のだと言い張り、埒が明かず大岡に持ち込んだが、大岡も困り果てた。ある日、川狩りに行くと川原で子供が三人、大岡と訴人になって同じ争いを真似ていた。子供の大岡は両人の乳汁を同じ椀に盛って重さを比べ、重い方が男の子の母だと裁いた。真の大岡は感服し、子供らの後をつけると山奥の一本柱の家に入って消えた。大岡はその家から今の傘を工夫し出したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
農民俚譚(佐々木喜善(著)・本山桂川(編)・佐々木喜善・東北民俗・1934年(昭和9年))
『農民俚譚』は、佐々木喜善が書きためた昔話や伝説を、その没後に本山桂川が編んで昭和九年に刊行した本である。陸中の和賀郡・岩手郡・胆沢郡で集めた炭焼長者や瘤取爺などの昔話に、河童・山男・山女・人柱・蛇にまつわる伝説、地蔵の話、異類に嫁ぐ女の話を記した「縁女綺聞」、紫波郡の口碑による「鳥蟲木石伝」などを収める。郡ごとの昔話には大正十三年の日付の前書きが付き、巻末に本山桂川の追想「佐佐木喜善君の遺業と其晩年」を置く。