山神祭前に入山した爺と西山の蛇
どんな伝承か
昭和三〇年頃、佐多町伊座敷の西山は炭焼き用に払い下げられて裸山になった。翌年の三月、住民はツワ蕗の出揃うのを待ったが、部落では三月十四日早朝の山神祭を済ませてから採る習わしだった。欲を出した爺が三日早く独りで山へ入り、干魚と唐芋を背負って摘んでいたが、蕗は短く籠は半分も埋まらない。中腹で一服しようとすると背後でシューという音がし、振り向くと一升瓶ほどの太さの蛇が大口を開け、赤い舌を動かしていた。爺は斜面を転げ落ちるように逃げ、振り返ると藁打ち槌の形をした姿が見えたという。山の神の使いが祭前の入山を怒って現れたのだと語られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 9 (木霊・蛇)(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 9 (木霊・蛇)』は、松谷みよ子が全国の回答者から寄せられた報告と各地の民話集をもとに編んだ『現代民話考』の一巻である。明治から平成にかけて語られた、伐ろうとすると祟る木・泣く木・血を流す木などの木霊の話と、大蛇やつちのこ、蛇婿・蛇女房、主や守り神としての蛇、蛇と福運などの話を、話者や回答者の名とともに収める。第一章「木霊」と第二章「蛇」を主題ごとの節に分け、各話例の後に「分布」として類話の地名と出典を並べる。