涅槃図に描き加えられた猫
どんな伝承か
昔、絵師の狩野義信が谷厳寺で釈迦の涅槃図を描いていた。横たわる釈迦を弟子たちと十二支の獣が囲んで嘆く図である。そのあいだ、寺のとら猫がいつもそばにいた。初めはおとなしく周りを回るだけだったが、絵が仕上がるにつれて義信に飛びつき、爪を立てて邪魔するようになり、完成の日にはとうとう絵に傷をつけた。腹を立てた義信も、やがて猫は自分も描いてほしかったのだと思い当たり、そう話しかけると猫はきちんと座った。本来は猫の入らない涅槃図に、義信は猫を描き加えた。猫は仕上がった絵をじっと見つめた後、姿を消して戻らなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
長野県史 民俗編 第4巻 3 (北信地方 ことばと伝承)(長野県史)
『長野県史 民俗編 第4巻(三)北信地方 ことばと伝承』は、長野県史の民俗編のうち北信地方の伝説の章を抜き出したものである。植物・石・水・塚・坂と峠・山・沢と道・城と屋敷・田と原・地蔵や観音・社寺・地名・禁忌の順に、条ごとに採集地を添えて短い伝えを並べる。戸隠の鬼女紅葉、黒姫と大沼池の大蛇、久米路橋の人柱、秋山郷の平家伝説など、善光寺平から奥信濃にかけての土地に結びついた話が多い。