三峯の山犬と戦った神宮寺の八
どんな伝承か
昔、秩父の三峯山に悪魔のような山犬がいて、田畑を荒らし、人を襲っては食い殺していた。大きく悪賢いので人の力では退治できず、村人は神に祈るほかなかった。ある夜、信濃の高社山の麓にある神宮寺の八でなければ勝てないと夢に告げられ、村は使いを出して八を借りることにした。かわいがっていた八を手放すのを惜しみながらも、住職は人の難儀を救うのが仏の道だと言って送り出した。八と山犬は三日三晩身じろぎもせずにらみ合い、ついに両方とも力尽きて倒れた。以来三峯山は穏やかになり、村人は八をたたえて三峯神社を建てた。神社の札に刷られる犬は八の姿で、盗難除けに土蔵や戸板へ貼られるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
長野県史 民俗編 第4巻 3 (北信地方 ことばと伝承)(長野県史)
『長野県史 民俗編 第4巻(三)北信地方 ことばと伝承』は、長野県史の民俗編のうち北信地方の伝説の章を抜き出したものである。植物・石・水・塚・坂と峠・山・沢と道・城と屋敷・田と原・地蔵や観音・社寺・地名・禁忌の順に、条ごとに採集地を添えて短い伝えを並べる。戸隠の鬼女紅葉、黒姫と大沼池の大蛇、久米路橋の人柱、秋山郷の平家伝説など、善光寺平から奥信濃にかけての土地に結びついた話が多い。