盆唄を歌いお山へ上った友の女房
どんな伝承か
田名部の柳町に住む中井という人が、お山で湯の花を採る人夫として雇われていたときのこと。ある晩、仲間が町へ酒を買いに出て、床でうとうとしていると、誰かが盆唄を歌いながら通っていく。こんな時刻に誰かと戸を開けると友人の女房で、黙って見ていると寺の中へずんずん入っていった。翌朝寺を訪ね、ゆうべ女の人が来ただろうと聞くと、誰も来ないという。話を聞いた坊さんは、よくあることだと笑っていた。一週間ほどして町へ下り友人の家に寄ると、女房は一週間前に死んだと言われた。中井が姿を見たのは、亡くなったその日の晩だった。女房の魂がお山へ上っていったのだろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。