白崎に居着く男の霊
どんな伝承か
霊感体質のおかげで釣り場では数多くの不思議を体験しており、珍しくないので恐怖心はあまりない。つい最近も、中紀の白崎でアオリイカを釣っている時におかしな体験をした。明け方の四時過ぎ、辺りはまだ暗く、背後から強い視線を感じた。釣っていたのは車を停めた場所から十五メートルほど離れた磯場で、視界が開けていて車が通ればすぐ分かる場所である。目を凝らして車のほうを見ると、私の車の横に男性が立ってこちらを見つめていた。話しかけるでもなくただ静観しているだけで、しばらくすると満足したのか空中にスーッと消えた。この男の霊はいつもこの近辺をうろついており、後で地元の人に尋ねると、その場所で死亡事故があったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ)
『水辺の怪談2』は、釣り人たちが釣り場や釣り宿で出会った怪異を、本人の筆で綴った体験記を集めた本である。伊豆半島や南紀の磯、黒部峡谷、芦ノ湖、中禅寺湖、北海道の渓流などを舞台に、金縛り、女の霊、謎の足音、自殺のあった場所の怪などを、釣りの様子とともに語る。「海の章」と「川・湖の章」に分かれ、各編の冒頭に筆者の住まいや職業、得意な釣りを記した紹介を置く。