終電の隣に座った血まみれの男
どんな伝承か
著者が信を置く友人から聞いた話である。その人は赤電車の終電に乗り、桜田門から桜田町へ向かっていた。乗客は自分ひとりで、運転台の近くに腰かけていた。交叉点に差しかかると車掌がポールを外し、車内が暗くなる。ふたたび架線に触れて明るくなった瞬間、すぐ横に男が座っており、腰から脚にかけて血がついているのが見えた。もう一度暗転して明るくなったときには、車内はもとどおり自分ひとりだった。車掌に話すと、事故の多い場所ですから時々ありますと事もなげに答えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。