砂糖より甘くならない汁粉
どんな伝承か
昭和十九年春ごろ、由良港の海軍日用雑貨倉庫で倉庫長をしていたときの話である。兄はふだんろくな物を食べていなかったが、休みの日に訪ねてきたことがあった。甘い物などしばらく口にしていないだろうと、食料品倉庫の長とこっそり物々交換して手に入れた砂糖で汁粉を作ってやることにした。砂糖はいくらでも手に入るので釜にどさりと入れたところ、兄はあわてて、そんなに無駄にするな、いくら入れても汁粉は砂糖より甘くはならないぞとたしなめたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。