口寄せに割り込んだ満州の女の霊
どんな伝承か
血脇啓寿が私事を語っている最中、イタコが突然苦しみ出し、別のホトケが降りてきたと言い出した。女性の霊であった。十数年来、恐山で口寄せを頼んできた著者にも初めての出来事である。イタコは数珠を激しくかき鳴らし、額に脂汗を浮かべて帰そうとしたが霊は去らない。霊は「私は満州であなたに生命を助けられた。生きる希望を持って日本に帰ったが、不治の病に冒され、みずから生命を断った」と言ってさめざめと泣いた。著者は後日、終戦の翌年に大連の老虎灘という自殺の名所で身投げしようとした若い女性を助け、日本人の組織に託したことを思い出した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の謎-新版タナトロギー入門(中岡俊哉・1990年(平成2年))
『霊魂の謎-新版タナトロギー入門』は、中岡俊哉が昭和四十八年刊の『タナトロギー入門』を大幅に書き改め、一九九〇年に文庫として著し直した心霊研究の本である。著者自身の霊体験から説き起こし、背後霊・地縛霊・騒霊・悪霊・淫霊などの事例、臨死体験と転生、死者の声の録音や自動書記、恐山のイタコ、心霊治療、心霊写真の鑑定を国内外の例で述べる。全五章を小見出しで細かく区切り、まえがきでは「七疑三信」という著者の調査の立場を語っている。