世界の破滅を案じた長苗代の女信者
どんな伝承か
明治三十年代から四十年代のはじめにかけて、青森県では天理教が盛んに広められ、信者のあいだでは、近いうちに世界は滅び、天理教を信じる者だけが生き残って、日本じゅうの土地がみな信者のものになるという話がささやかれていた。ある女の信者は、自分の村から八戸の町へ出かける途中、長苗代の広々とした田畑の中を通り抜けながら、本気でこうつぶやいたという。世界が滅んでしまったら、この広い田んぼまで残らず自分たちだけで植えつけなければならないのだろうか、と。そう言って、深いため息をついたそうである。
原典より
今に世界が破滅したら、こんな廣い耕地までが全部自分達だけで植作せねばならぬのかなあ。—— 變態心理と犯罪(中村古峽) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。