外れた大本神諭の内閣予言
どんな伝承か
大正七年九月、著者が丹波の綾部に大本教を訪ねたころ、寺内内閣が倒れて後継が決まらず、世論は西園寺に集まっていた。大本教総務の浅野和三郎は得意げに著者へ語った。神諭の予言では寺内の次は短命の西園寺内閣、その次が松隈内閣で、大正十年には日本と世界の大戦争が起こり、東京は敵の飛行機の襲撃で元の武蔵野に戻る。そのとき大本教が活動して世界の大立替が始まり、ついには綾部が日本の中心になる、というのである。著者はこれをノートに書き留めて帰ったが、綾部を離れて二週間もたたないうちに西園寺内閣は実現せず、原内閣が生まれた。著者は、神諭は都合次第でいくらでも変えられると皮肉っている。
原典より
處が余が綾部を去つてからまだ二週間と經たぬうちに、輿論の的であり且つ大本神諭の豫言の的でもあつた西園寺内閣はいつの間にか流産となつて、…—— 變態心理と犯罪(中村古峽) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。