死んだ役者が楽屋に届けた盛りそば
どんな伝承か
日清戦争が終わって間もないころ、佐賀市材木町一丁目で起きたという話。梅玉一座が九州を回るうち入りが落ち、病んだ下まわりの菊之介を興行先に預けたまま旅立った。佐賀に来た十三夜の晩、不入りで座が白けていると、思いがけず近くのそば屋から盛りそばが一四人前届き、楽屋の入口には薄羽織を着ておじぎをする菊之介の姿があった。一同が食べ続けていると、一人が「菊之介は死んでいる」と叫ぶ。折しも走り使いの男が菊之介の骨壺を持って現れた。そば屋はついに代金を請求に来なかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。