四十九日に寺尾の姉宅へ出た亡母
どんな伝承か
昭和十六年七月三十一日、住谷Kさんの母Mさんが死んだ。若夫婦は一週間後に朝鮮へ働きに旅立ち、家は学校の先生に貸していった。四十九日にあたる九月十七日未明、留守居の女教師の枕元にKさんの母が立った。何も言わなかったが夢にしてははっきりしており、気味悪くなった教師は子守の娘と早朝に墓参りへ行った。同じ日の午後三時頃、高崎市外の寺尾にある矢島某氏方にも同じ幽霊が現れた。埋葬の際に襟を取り去った着物を頭からかぶり、前布を掴んで姉と娘を見るや着物を後ろへ引いて顔を出した。母娘は跣足で庭へ飛び出し、男たちが駆けつけた時には影も形もなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。