大洪水を招いた五郎沼の大蛇お菊
どんな伝承か
岩手県紫波郡の五郎沼には大蛇が棲むと伝えられ、その化身は「お菊」と呼ばれた。寛政三年一〇月一六日に起きた大洪水は、この大蛇のせいだとされ、土地では「お菊の水」とも呼んだという。皿屋敷の女中や、水に沈められて死んだ女の名がいずれもお菊であるように、水辺の怪異にはお菊の名が重ねられることが多い。原典はこの五郎沼の例に続けて、宮城県牡鹿郡渡波町の寺の池畔に祀られる白狐の名もお菊であると記し、水と女の名の結びつきを並べて挙げている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。