機関長と観海楼の遊女マカテーの恋
どんな伝承か
神戸と那覇を結ぶ浮島丸の機関長牛島虎雄は、那覇に入港するたび辻遊廓の観海楼に通い、名護出身の美しい遊女マカテーと、身受けして夫婦になる約束を交わしていた。マカテーの歌う故郷の名護浦の歌に聞きほれて三日三晩を過ごした牛島が出航する朝、マカテーは人目を気にして桟橋でハンカチを振るだけで、船が港を出ると突端の丘の三重城に駆け上がってなおも振り続けたが、牛島は甲板にいなかった。こうした遊女の深情けを歌い踊りにしたのが民謡「花風」だという。牛島は神戸で船がドック入りする間に身受けの金と新居を用意したが、三か月のあいだ一度も便りを出さなかった。
原典より
神戸と那覇(なは)間を往復する航海船浮島丸の機関長牛島虎雄は、那覇港に入港するとただちに上陸して、観海楼(かんかいろう)の馴染の美妓(びぎ)マカテーのところに行くならわしであった。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。