波の上の荒磯で抱いたマカテーの霊
どんな伝承か
神戸で身受けの金と新居を整えた浮島丸の機関長牛島は、三か月ぶりに那覇へ向かったが、嵐で遅れて着いたのは夜の十一時過ぎだった。観海楼の女将は、マカテーは便りのない牛島を恨みながら病みつき、故郷の名護へ転地療養に行ったと告げた。気落ちして泡盛をあおった牛島が午前二時に船へ戻ろうと歩くうち、いつのまにか波の上神社のある荒磯に来ていた。茂みから現れたマカテーは、元気になって名護から歩いてきたと言い、二人は砂浜で抱き合って眠った。明け方目を覚ますと腕の中にあったのは海草で、そこは共同墓地、新しい墓標には「島袋マカテーの墓」と記されていた。
原典より
急に飛び起きた牛島が、あたりを見まわすと、そこは共同墓地で、新らしい墓標には「島袋マカテーの墓」と記されていたので、びっくり仰天して、腰を抜かしてしまった。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。