崇元寺の一つ墓に出る逆立ち幽霊
どんな伝承か
那覇の崇元寺近くの墓地のほとりに、幽霊の出る一つ墓があった。現れるのは逆立ちをした女の幽霊で、黒髪が前に垂れ下がり、目をむいた恐ろしい形相だったという。正体を見届けると豪語していた若者二人は、丑三つ時に阿旦や竜舌蘭の茂みから現れたこの幽霊に願い事があると声をかけられたが、腰を抜かして命乞いをするばかりだった。幽霊が姿を消すと、二人はいざりながら逃げ帰った。噂が広まると見物人が押し寄せたが幽霊は現れず、人が絶えるとまた目撃が増え、夜は崇元寺のあたりを通る者もいなくなった。
原典より
それは女の幽霊で、逆立ちして、黒髪がばさっと前に垂れ、眼をむきだして形相ものすごく、これでは如何に大胆なものでも、腰を抜かすであろう。—— 沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
沖縄怪談集 逆立ち幽霊(伊波南哲)
『沖縄怪談集 逆立ち幽霊』は、石垣島で育った詩人の伊波南哲が、新聞や雑誌に書いた話と書きおろしを合わせ、沖縄の怪談を物語風に綴った怪談集である。那覇の辻遊廓や一日橋、首里、石垣島・竹富島などを舞台に、遊女や捨てられた女の幽霊、遺念火、キジムナー、お化け封じの術を描き、戦後のタクシー幽霊の噂や東京で起きた位牌の嫁入りの話も取り上げる。題を付けた二十二話のあとに「怪談断片集」を置き、少年時代を語る「果たして幽霊はいるのか」で結ぶ。