鯨島から響いた古狸の浄瑠璃
どんな伝承か
昔、松島の鯨島に古狸が棲んでいた。ある晩、朴島の漁師が鯨島の近くまでハモ釣りに行ったところ、鯨島で賑やかな鼓の音が聞こえていたが、やがて漁師の名を呼んで、今夜は屋島合戦の浄るりをきかせようといい、その夜は良い声で語ってきかせた。残りの段は明晩きかせるといって止めてしまったので、漁師は部落に帰っていちぶ始終を話し、明日はみんなで聴きに行こうと誘った。しかし翌晩、みんなで行ってみるとお囃子も浄るりも聞こえず、みんなに責められた。しかしあとでは、一人で夜釣りに行く者は誰でも聴かされたということであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。