拝島の古寺で捕らえた一貫目の大鼠
どんな伝承か
北多摩郡拝島村の普明寺は四百年前の建立と伝わる古寺で、明治四十年ごろ、その境内の一部へ村役場が移された。すると人けのない本堂に夜ごと何かが出没し、供物が消えることが続いた。鼬だろうと放っていたが、ある日、昼間に供物を引いていく獣を役人が目撃する。古猫ほどの大きさで、毛は茶褐色の針のように立ち、目が光る不気味な鼠であった。役場の若い者たちが村長を指揮官に立てて寺じゅうを狩り立て、収入係の和田が本堂北隅の梁に太い尾を見つける。逃げ道をふさいで叩き落とし、袋で生け捕った鼠は大兎ほどもあり、目方は一貫三百匁、牙も爪も恐ろしげだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方 編著)
『日本怪奇集成-明治大正昭和篇』は、富岡直方が編んだ怪奇実話集である。明治元年から昭和七年までに各地で起きた幽霊や狐狸の怪、畸形や奇病、天変や奇瑞、世相の珍事を、当時の新聞・雑誌の記事と筆者自身の聞き書きから集めている。明治・大正・昭和の三篇に分け、話ごとに年月を掲げて通し番号を振り、新聞記事を引いたうえで紙名を末尾に添える形を基本とする。