麻布の屋敷を火から守った大蝦蟇
どんな伝承か
五千石の旗本山崎家の奥庭続きの池のほとりで、娘の香保子姫が見知らぬ美しい若侍に言い寄られ、草むらへ引き入れられた。姿が見えないのを案じた足軽が駆けつけると、大きな蝦蟇が姫にのしかかっており、六尺棒で打ちかかると池の底へ潜って消えた。主の治正が水を干して退治すると息巻いた夜、夢枕に蝦蟇が現れて詫び、屋敷を末永く守ると誓ったので許された。文政四年四月二日、古川端から出た火で麻布一帯が焼けたとき、池から這い出た蝦蟇が水を吐きかけて火を消し、この屋敷だけが焼け残ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸動物民話物語(窪田明治)
『江戸動物民話物語』は、「郷土史・東京」の刊行会を主宰した窪田明治が、東京の郷土史を調べた材料から江戸の民話を選んでまとめた本である。狐や狸、猫、蛇が人を化かし、恩を返し、祟る話を中心に、本郷・王子・向島・麻布・三田など東京各地に伝わる話を収める。狐・狸・猫・蛇・不思議な生き物の五部に分け、一話ごとに舞台となった土地の史跡や寺社の由来、沿革の解説を添え、まえがきとあとがきを付す。