神棚から火事を告げた稲荷の声
どんな伝承か
江戸城大奥の総取締役だった滝山は、渋谷宮益坂途中の千代田稲荷を篤く信仰し、自室にも分霊を祀って朝晩祈っていた。文久三年の春のある夜、いつものように祈りを終えようとしたとき、狐がやけに妙な鳴き方をするのを不思議に思った。床について、うとうとしはじめると、神棚から「火事だ、火事だ」という声がした。はっと飛び起きると、すでに室内には黒煙が立ち込め、火が天井に燃え移ろうとしていた。腰元たちも騒ぎ出したが、火は間一髪で消し止められ、誰にも怪我はなかった。放火と思われたが証拠はなく、滝山はこれもお稲荷さんの加護だと、以後いっそう千代田稲荷を信仰したと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸動物民話物語(窪田明治・江戸時代~明治時代の民話を記録した著作(推定20世紀初頭))