妻を差し出して乞うた江戸重長の赦免
どんな伝承か
鎌倉に腰を据えた頼朝は、多摩川沿いの丸子の庄を葛西清重に与えた。恩賞の礼にと清重は自分の館へ頼朝を招いて泊め、旅の慰みにと称して一人の美女を寝所へ差し向ける。頼朝は上機嫌で褒美を約したが、差し出された女は実は清重の妻その人だった。清重が望んだのは金品ではなく、平家への義理から参陣を渋って頼朝の不興を買っていた江戸太郎重長の赦免である。願いは容れられ、江戸氏の本領は安堵された。清重はのちに奥州征伐でも功を立て、石巻に城を構えて葛西氏繁栄の基を築いたと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
江戸動物民話物語(窪田明治)
『江戸動物民話物語』は、「郷土史・東京」の刊行会を主宰した窪田明治が、東京の郷土史を調べた材料から江戸の民話を選んでまとめた本である。狐や狸、猫、蛇が人を化かし、恩を返し、祟る話を中心に、本郷・王子・向島・麻布・三田など東京各地に伝わる話を収める。狐・狸・猫・蛇・不思議な生き物の五部に分け、一話ごとに舞台となった土地の史跡や寺社の由来、沿革の解説を添え、まえがきとあとがきを付す。