機関車に化けて轢かれた大森の古狸
どんな伝承か
東京と横浜の間に初めて汽車が通ったころ、大森のあたりに古狸がすみついていた。狸は機関車に化けて、本物の機関車をたびたび脅かしたりからかったりしていたが、とうとう轢かれて死んでしまったという。平山蘆江が明治三十四年に上京して世話になった下谷車坂の大石家で、千代田城の御典医の家柄の老婆が、歯の無い口で歯切れのよい江戸弁を使い、本当の事と信じ切って語って聞かせた話の一つである。
原典より
東京から横浜まではじめて汽車が通った時、大森あたりに古狸がいて、それが機関車に化けて度々本ものの機関車をおどかしたりからかったりした揚句、到頭、轢かれて死んだとか、…—— 私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私は幽霊を見た(東雅夫(編)・MF文庫ダ・ヴィンチ)
『私は幽霊を見た――現代怪談実話傑作選』は、東雅夫が編んだ怪談実話のアンソロジーで、メディアファクトリーのMF文庫ダ・ヴィンチの一冊である。平山蘆江・火野葦平・佐藤春夫・徳川夢声・遠藤周作・柴田錬三郎から石原慎太郎・新倉イワオ・稲川淳二まで、作家や文化人が自ら見聞きした幽霊や怪異を書いた文章を集める。目次には二十三篇と編者解説が並び、水木しげる・山田野理夫・桝井寿郎の座談「怪談詮議」や中岡俊哉「イタコの謎を追う」の抄録も含む。