背に浄法院と読める白毛の牛
どんな伝承か
大田区の古い住民の一部には、僧は死ぬと牛に生まれ替わるという言い伝えがある。明治の末に亡くなった安光寺の住職は、死期が迫ると毎日のように、もうすぐ牛にならねばならぬと悲しげに呟いていたという。同じころ大森の浄法院の住職が死んだ際、日ごろ世話をしていた檀家総代の若い男が、話の真偽を確かめようと、こっそり屍の背に寺の名を墨書して葬った。数年後、旧東海道すじで、牛を浄法院と呼ぶ牛方に出会う。背に白い毛でその字が出ているからだという。二人は奇遇に驚き合った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。