紅茶を舐めながら震動を観察した学者
どんな伝承か
地震を怖がった臆病な子どもが、のちに地震現象の研究を手がけて恐怖を克服した話。両親が安政の地震に遭難した実話を子どものころから聞かされて育ったが、理化学を修めて研究を始めると恐怖は消え、地震が来ると初期微動の秒数を数え、主要動の方向や週期や振幅をできるだけ確かに認識しようとする努力が先に立つようになった。関東地震の瞬間は上野の二科会展覧会場の喫茶店で某画伯と話しており、皆が屋外へ飛び出したあとも一人残り、飲み残りの紅茶をなめながら振動の経過を観察していたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異考 - 化物の進化(寺田寅彦・大正9年(1920)〜昭和12年(1937)発表の随筆を収録。中公文庫『怪異考/化物の進化 寺田寅彦随筆選集』)
物理学者・寺田寅彦が大正9年〜昭和12年に発表した随筆を集めた一冊。表題作「怪異考」では郷里高知の怪音「孕のジャン」を地鳴り(小規模地震)、馬を殺す魔物「頽馬・ギバ」を空中放電(セントエルモの火)と推定するなど、各地の怪異を一次資料(『民俗怪異篇』『伽婢子』等)に基づき現代科学の語彙へ翻訳する。