穴一念を見られた娘と幽霊石
どんな伝承か
奥州福島の余目にある金源寺の住職は書がうまく、手習いに通う者が多かった。小姓頭の石栗勘由もその一人で、遅くまで手習いをして墓地の路を帰る夜、カチッカチッという音を聞いた。近寄ると若い娘が穴を掘り、数間離れた所から小石を投げ入れていた。願を懸けて石を穴に入れる穴一念である。三度目に勘由が声をかけると、娘は心願を見られて破れたと言い、口を大きく開いておまえを食うと迫った。勘由が抜刀して斬りつけるとカチンと手応えがあり、娘は消えた。翌朝、墓石のかたわらの石が切られ、血がべったりと付いていた。以来その石は幽霊石と呼ばれ、いまも金源寺に残るという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。