焚火にあたりに来た狢の最期
どんな伝承か
秋田県の角館に五右衛門というカンジキつくりがいた。五右衛門はいつも山の中に入ってカンジキをつくっていた。あるとき、五右衛門と呼ぶ声がする。誰だと問うと、おれは狢だ、きょうは寒いから焚いている火にあたらせてくれという。人を化かす狢だなと言いながらも五右衛門はあたらせてやった。狢は温まるとキンタマまであぶりはじめ、腹がへってきた、おまえは骨と皮ばかりで食らってもうまくないと言って舌を鳴らした。食われるのではないかと薄気味悪くなった五右衛門が思わずカンジキを放すと、曲がっていた小柴が弾けて狢のキンタマに強く当たり、狢は唸って死んだ。そのキンタマからは人の首がいくつも転がり出た。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。