位牌から飛んだ六文銭とズンダ餅
どんな伝承か
福島の相馬地方新地村に、新助とイクという仲むつまじい夫婦がいた。イクは胸を病んで臥せり、死期が近づくと、自分が死んでも後妻を貰ってくれるなと言い残して亡くなった。一年経ち、新助はやもめ暮らしが嫌になって後妻を貰った。盆にイクの位牌を仏壇に飾って念仏を唱えていると、位牌からいきなり六文銭が一枚飛んできて額に貼りついた。イクが焼き餅を焼いたのだと考えた新助は、これでは表を歩けないと思い悩み、イクの大好物だったズンダ餅を後妻に作らせた。豆をつぶし砂糖を加えて餅を入れた摺鉢をのぞくと、額の六文銭がぽとんと落ちたという。いまでもズンダ餅は農家で作られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。