飢饉の津軽で首を食わせた男
どんな伝承か
天保の頃の話である。津軽に美しい女がいて、男たちは思いを寄せていた。その年、津軽は飢饉になり、草木を食べつくすと人びとはばたばたと死に、生き残った者は死んだ者の死骸まで食べつくした。美しい女には男どもが食べものを運んできたので、女はますますかがやきを増した。女は食べものを持ってきた男と契り、事が終わると男は死に、女はその男を食った。ある日、たくさんの生首を背負った男が訪ねてきて、二人は毎日一つずつ生首を食った。それも食べつくすと、男は自分の首を女に食べさせたという。やがて草木が芽を出しはじめ、女は死なずにすんだ。そのあと女は首のない男と夫婦になり、仲よく暮らしたということだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。