屍を食い雉子となったこさん
どんな伝承か
遠野地方でコサとよぶ蔓草にちなむ話である。子のない爺と婆が近所の明神様へ丑の刻詣りをし、蛇でも鬼神でもよいから子を授けよと願をかけた。ある夜、婆はコサの花が自分のふところで咲く夢を見て懐妊し、生まれた女児をこさんと名づけた。こさんは美しく育ち十八で婿を迎えたが、その頃から毎夜寝床を抜け出し、手足を氷のように冷たくして戻るようになった。婿が後をつけると、こさんは寺の蘭塔場へ鳥が飛ぶように走り、新墓を掘り発いていた。翌晩、姑と婿が見張ると、こさんは棺から死人を取り出してむしゃむしゃと食っていた。母親が思わず声を立てると、こさんは体から青火を出して鳥となり、向山へ飛び去った。こさんは雉子であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。