子を殺して笑む女乞食
どんな伝承か
天明年間は飢饉が続き、空腹の者が南部遠野の城下に流れてきた。その中に三つ四つの子を連れた女乞食がいた。子供が何か食べたいと泣きじゃくると、女乞食はやさしい声で、誰でも腹がへっているのだよ、泣くなと叱り、子供はあきらめて黙った。それからしばらくして、女乞食は突然子供を抱えて早瀬川の岸へ走り、石で頭をなぐりつづけた。頭はざくろのように割れて子供は死に、死骸は川へ棄てられた。川で顔を洗うと、何事もなかったように立ち去った。多くの者が見ていたが、不意のことで誰も手出しができなかったという。立ち去る女乞食は別人のように微笑を浮かべた美しい女であった。殺された子供は河童に化身して川原で遊んでいたともいう。
原典より
一二番 オトロシ・・・・・・30二四番 紅鼠......46三七番 壁になった赤児・・・62一三番常陸坊海尊 30二五番 竜の頭48三八番 職人女房 63三九番 蛙綿を着た娘・・・・・・64四一番旅籠の客………………………—— 東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。