夜ごと近づいてくる白衣の老婆
どんな伝承か
著者は六年ほど前、東大の病院で胃潰瘍の手術を受けた。九月一日に入院し翌日が手術だったが、ガス麻酔がよく効かず、口にガーゼを詰められて訴えることもできないまま二時間を耐えた。七階の病室からは上野の動物園のモノレールが見え、夜は御徒町の灯が空を彩る。三週間して順調に回復したころ、大小の骸骨が十体ほど枕もとに集まって囁き合う夢を見た。翌日から高熱が出て重症に逆戻りし、毎晩二時になると原因の分からぬ出血が続く。やがて夢に、喉へ絆創膏を貼った白い着物の老婆が現れ、夜ごと少しずつ近づいてきた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。