白昼の路上で消えた二人連れ
どんな伝承か
語り手がまだ若かった昭和七年ごろの盛夏、看板屋の土屋塗装店で働いていたときの話である。十六歳ほどの弟子と二人、午後一時ごろに元芝交番の筋向かいの氷水屋で、かき氷を食べていた。目の前の大通りを、カンカン帽をかぶった長身の男と、二十四、五の女がうつむき加減に並んで通り過ぎた。二人の姿が見えなくなって一、二分のち、自転車で坂まで来ると、その男女が後ろを向き、道をふさぐように立っている。どいてくれと怒鳴っても動かないので、自転車を降りて近寄った途端、照りつける真昼の日の下で二人はぱっと消えた。付近を探しても何も見つからなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・幽霊・怪異体験・昭和)