桔梗の浴衣の女と写らぬフィルム
どんな伝承か
女優の白川和子が語った体験。昭和四十四年の冬、ロケで泊まった塩原温泉の宿でのことだという。眠って間もなく息苦しさに襲われて目を開けると、部屋の隅に若い女がぼんやり立っていた。髪は短く、白地に桔梗を散らした浴衣を着て、悲しげな表情をしている。思わず声をあげると、その姿は薄れるように消えた。翌日、同じ部屋で撮影をしたところ、回したフィルム四百フィートには何ひとつ像が残っていなかった。宿の女中に尋ねると、かつてその一室で駆け落ちした男女が心中を図り、女だけが命を落としていたという。幽霊よりも、その話を聞いたときのほうが背筋が寒かったと結んでいる。
原典より
ロケーション先の塩原温泉の旅館でのこと……………。—— お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・幽霊・怪異体験・昭和) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・幽霊・怪異体験・昭和)