笹ヶ峠に並ぶ宮庄家の紋の狐火を撃つ
どんな伝承か
藤田八郎右衛門は豪勇で武芸に長け、猟を好んだ。若いころのある夜半、御庄駅の西にある笹ヶ峠を越えて河内村へ雉撃ちに向かった。峠の中腹を登っていると、谷を隔てた向かいの道を提灯がいくつも列をなして下ってくる。提灯の紋ははっきりと見え、すべて宮庄家の違い契りの紋だった。八郎右衛門は恐れず、例の狐の仕業だろうと立ち止まって鉄砲に玉を込め、提灯を狙って撃つと火はたちまち消え、あとには何もなかった。後日宮庄氏に話すと、勇ましいが今後はその紋の提灯を軽々しく撃たぬようにと戒められたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
岩邑怪談録(広瀬喜尚(増補:今田純一/続録・編:藤田葆/付録:静間密/昭和版編集:宮田伊津美)・1976年(昭和51年))
『岩邑怪談録』は、岩国藩士広瀬喜尚の怪談録に後人の増補と続録を合わせ、岩国徴古館が昭和五十一年に発行した資料集である。岩国周辺で人々が出会った化物・大坊主・生首・怪火・狐狸・天狗倒し・幽霊などの話を収め、藤田葆が編んだ『岩国沿革志』のうちの二冊を底本に、なるべく原文のまま新字に改めて載せる。広瀬の本録に、今田純一の追加、藤田の続怪談録と実事談・変死、静間密の付録五話を続け、巻末に語注を付す。